MIND TRAILという芸術祭に作品を展示するため絵を一枚描きました
7月末に奈良の吉野に初めて視察に行く
山の中を5時間くらい歩く芸術祭
そのコースをまず自分の足で歩き 作品の案や展示したい場所を考える
たった1日の視察では 感じ取れるものは多くない
吉野が桜の名所であること 修験道の総本山ということ 一般的な知識はなんとなく
けれど キョロキョロと 自分の心を無にしながら歩き見ていると
引っかかるものや 直感的に これはこうだな みたいなものはなんかある
金峯山寺の人が蔵王権現さまの話や 修験の話をしてくださる
神も仏も 目の前に現れるものすべてに祈る そのような話に何かふと親和性を持った
歩く道すがら たくさんの小さな石仏やお地蔵さんを見かける
全国各地 色々なところでこういう 誰かのかつての何かの創作を見つけるたび 惹かれてきた
石は本当にすごくて やっぱりずっと残るし 人の手が作っている形というのは自然の中でハッと目に入る
でも いつ誰が どうして?そこまではわからない
それでも そうやってその時代背景や詳細が薄れてきたからこそ 今そこにある石がもう本当にただの意志になっていて
想像する
吉野の山は全体美しく 写真もたくさん撮ったけれど だからこそ 歩いて見て回る芸術祭でそれを作品にする気持ちにはならず
場所としては 水分神社というところがすごく好きになった
山をハアハア歩いて疲れ果てたところで その神社に入ると しいんとした気持ちになった
ここで絵を見ることができたらいつもと違う心持ちになるかも知れないなあと
思った
視察で感じたことはきっかけ
家に帰って 思い出す
ふと目を留めたお地蔵さんが もたれかかっている大きな木が空洞になっていて その中に昼間の木漏れ日が射していたのを観た
光に照らされてそこだけ光る蜘蛛の糸や木の葉
歩いている人がふと目を留めたときに偶然見つけたかのような光の溜まり 陽だまりの絵を描くことにした
アトリエで1ヶ月ほど写真と印象を元に描き進める フワ〜としたものが出来上がっていくが これでいいのかが決めきれない
何せ一回しか見ていない景色!しかも歩いて回った中のほんの一瞬
これは実際吉野に行ってからでないと仕上がらないぞ。。と内心ドキドキしながら
絵の仕上げのため 9月の22日から十日間ほど吉野に滞在し制作をした
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ずっと宿泊したKAM INNというゲストハウス が!!!
よかった〜〜〜〜〜
ここに泊まらなかったら私の滞在生活も 吉野に対する考え方も はたまた作品も
全然違うものになったなあと思う
山伏女将の片山さんが 私の印象では専属のツアーコンダクターくらいの感じで私の滞在を支えてくれていた
中学時代のあだ名が「図鑑ちゃん」なだけあり 様々なことを知っている
修験だけでなく植物 仏像 歴史 苔 地衣類 妖怪
聞いているだけでおもろい話をたくさんしてくれた
こちらの素朴な疑問にもすべて答えてくれ 吉野という場所を
森羅万象キャカラバアな感じで感じ取れたのではないか。。。
ともかくゲストハウスでの滞在制作は よく考えてみると初めてで
たくさんの 色々な目的や意志で訪れ泊まる人たちと話ができたことは
一人しずしず ノロノロする制作生活の中にたくさんの風を吹かせてくれたと思う
女将
三毛猫のちいちゃん
金峯山寺は工事中 四角い!
制作は 東南院というお寺の持つ施設で行った
たくさんの土産物屋や宿があるメインストリートにあるので
コツコツやっていると 通りがかりの人が声をかけてくれる
雨の日は人通りもなく 静かな場所
商店街の日常って面白いなあ そこに 同化するでもなく 一緒に過ごさせてもらう気分
そうやってなんとか絵を描き出すのだが やはり
視察の時にみた木をもう一度見て見なければならんと思い 女将に こういう場所を知らないかと聞くと わかった
絵を描き終えた夕刻 視察以来の山登りで 木の場所へ行く
あった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この時のドキドキと驚きは 今でもうまく言い表せない
夕方の光が木の印象をさらにすごい感じにしていて
私は 思わず拝んだ
あなたでしたか!!!そういう言葉が勝手に出た
今までウンウン唸って写真を見ながら思い出していた木とその周辺の空間は
思っていたより100倍くらい良いもので
かつて一度訪れたことは 夢のお告げだったの?くらいに
今初めて その木に本当に出会った という感じがした
こういう フアフアしたことを言葉にしてしまうと 何か大切なものが逃げて行ってしまいそうで怖いが
ともかく 私は生まれて初めて「自分の木」に出会ったと思えた
上を見上げると 折れた木の残りが高く伸びている かっこいい。。
この空洞の真ん中にあの時 偶然木漏れ日が射していたのだなんて 不思議だな
もう一度帰るまでに 見ることができるかな
という思いが湧いて それは自分の中で切実なものになった
日が沈みかけるまで木のそばにいて いよいよ宿に帰る道すがらは
ドキドキと 今のこのままの絵ではダメで もっとこう、、、ああいう感じだ!みたいな 今見たものへの思いがぐるぐるして
しょんぼりというか そんな感じで帰宅
ゲストハウスでは 入れ替わり立ち代り色々な人が泊まっていたが
私と女将は基本一緒にご飯を食べていた(食べさせてもらっていた)
人と食べるご飯はおいしいなあ
柿の葉寿司はおいしいなあ
しょんぼりして焦ってても ご飯食べる そして 毎日ビール飲む
完成した絵は水分神社さんに展示させてもらうことになっていて
そこに合うようにインストーラーの高橋さんに木のイーゼルを作ってもらう 素晴らしい出来
この木は 信じられない傾斜の林道を役所の西井さんの運転する車で西尾さんと取りに行った
地元の林業の方すごい いやすごい道だったなあ
辻村さんからおいしいお団子差し入れ
滞在中 いくつかの地元イベントに遭遇できた
これは地蔵盆という お地蔵様のお祭り
本当は 餅など撒いたりして子供らもワーワーやるものであったらしい
今回は 静かにお祭りする
女将の師僧である岳良さんと 女将が お経を読む
響き渡る法螺貝の音がいい
というか 全部いい 何か懐かしい感じ
岳良さんは本当に生き字引のような人でたくさんの話を聞かせてもらう
お地蔵さんは 道しるべ
そして 何気なくあるお地蔵さんも きちんと誰かが面倒を見続けてきている
私が描いている木の根元のお地蔵さんのこと
あの場所が「雨止」と呼ばれていること その言われ
木が折れた時の台風の話
色々なことを聞くことができた
言い伝わるものを聞くたび そのものを見つめる目が ずし〜〜と 何か遠く深くなってゆく感じがあるがうまく言い表せない
ほぼ住み込んでいた うだくんとゆうきちゃんとよくご飯を一緒に食べた
とにかく食べる二人だった 家族みたいに 置き手紙とかしてご飯作り置きしたりして
滞在しだして数日後 今夜は女将は山に行って留守です!と言われていて
ゲストハウスのお留守番の日
この日は 岳良さんのお弟子さんたちや一般の参加者も含めての
山へ入る日であった 前鬼山というところ
前泊していた参加者達とも話をして その山のこと 泊まる場所のこと
たくさん聞かせてもらった
私は制作途中の絵を抱え ぐぬ いいなあなんて 思いつつも
清々しい朝
金峯山寺の方角へお祈りし(私の洗濯物がヒラついて邪魔だ)
出発してゆく皆を見送る
吉野での生活が まだきたばかりなのに 体にあっという間に馴染んでゆく
そこで生活する人たち と 山と 全部ぐるぐる巡らさる
もう自分がどこにいても その一部であることは
わかっているんだ
だからこの日も しずしず絵を描く 夜はうだくん達とご飯を食べた
岳良さんのお堂にも 時たま朝の勤行に参加させてもらっていた
金峯山寺での時とはまた違う ポツン と 祈る感じ
お供え物に雑然とピーマン !
制作時間 ジリジリと差し迫る中
私は晴れの昼間を待ち望んでいた 午後 太陽が真上にある時
あの木の中にまた 光が差し込む瞬間を見たくて
グズグズ曇りが続いたが 今日はいけるかも!という日
女将と 女将の友人の苔好きの子と共に お弁当を木の根元で食べようと計画する
はじめ薄曇りであった天気
さあ〜っと明るくなり 木の中 光った!
私が7月の終わりに初めて見た時とは違う場所と光り方だったけれど
その瞬間は 嬉しくて
でも全部 とにかく二度と戻らない今なんだなあ
最近は 飛び上がるほどの喜びにはいつも 寂しさが同時についてくることが わかってきて
いい瞬間はいつも 泣き笑いの顔です
食べ物の写真ばかり撮っていたのは 誰かがご飯を作ってくれていたから
これはうだくん作のサンドウィッチ 制作中に人の飯は沁みるなあ〜
描いている場所の目の前の 弁慶というお店のさとこさんが
絵をよく見ていてくれた 葛餅の差し入れも。。沁みる
絵も佳境の この日 「歩く絵のMIND TRAIL」というパフォーマンスのため
朝から動き出す
私の描いた絵が 山道を歩いて 水分神社まで行く
学生さんも手伝いに来てくれて!映像でバッチリ記録
写真撮影で埼玉から吉永ジェンダーさんも登場
過酷な旅になることは予想していたが 絵を持って急勾配の道を40分ほど
交代しながら歩く ヒー きつい!
序盤ですでにめげながら なんとか林の道くらいまでくると
やあ 景色がいいなあ!
街中を出発
太鼓判のご主人 本当に全ての作品や作家のことをいつのまにかよく見てくれている
絵と その絵の木 ドキドキ
途中 雨止さんの木にも寄る 皆に木を紹介できて嬉しい
よいしょよいしょ まだかなあ と歩いていると
どこからか 美しい法螺貝の音が!??
なんと山伏女将が 法螺貝を吹いて励ましてくれていたのでした
山を歩いていて 高らかな法螺貝の音が聞こえた時
足元しか見ていなかった視界が 山全体に広がるようだった
目だけじゃない 耳も鼻も 全身を使って みている
みようとしているんだ
この後皆の足取りが急に軽くなり 一気に水分神社へ
自然光の中の絵は 動いているようだなあ
水分神社が見えたぞー
よいしょよいしょ ついた!!
法螺貝の演奏を奉納する女将
静かな気持ちと 高鳴る気持ち
本当にありがとう! 皆で登れてよかった。。。
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絵が水分神社まで行って その場所にそぐわなかったらどうしようと思っていたけど なんとかなじんでいてほっとする
みんなで坂道を下って綺麗な景色が見えて 視界がひらけて
ああ おしまい!と思いかけたけど 実はまだ終わってない絵
翌日 小雨降りしきる中 一人絵を描きあげる
この日が最後
絵はどうだろう どうなんだろう
なんだかいつもと少し 違う最終日だった
絵の描き終わりは やったー!とかはなく 静かに終わる
この日の夕方 役所の足立さんが出かけて 弁慶は定休日で
小雨が音もなく降っていて 通りを歩く人はいない
ハッ とした時 本当に誰も周りにいなくて
音が一切なくて
私しかこの吉野にいないんじゃないかと思った
ぬるい空気が全部を包んでいて
ここはどこなんだろうか なんで私はここで絵を描いているんだろうか
不思議さ
吉野の山にポツン ただ立っているみたいな気持ち
雨止さんの木のことを思い出したりして なんとも不思議な最終日
すぐに皆が帰って来て バタバタ撤収
吉野では 制作の時以外も何度か その場所の温度や天気や
音が異様になくて静かな時など 不思議な感覚になる瞬間があった
自分が今 不思議な山の中にいることを たまに思った
そういう静かな体験が 最終的に今回の滞在制作の全部を包んでいて
未だに 人に うまく語ることができないんのだ
こういうことは 初めてだ
だからこれで 記録はおしまい
感じたことは これからの絵に なっていく多分きっと
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歩く絵の記録映像を展示させてもらった TSUJIMURA & Cafe kitonさん
水分神社さん
奉納をさせてもらう時 たくさん宮司さんとお話をした
貴重な体験でした
こちらは西尾美也さんの作品
展示が無事済んで 女将と吉野を巡る
なんて楽しい
天川村の展示も見ることができた! 吉野とはまた違う雰囲気
こちらは上野千蔵さんの作品
木村玄伯さんの作品 うむ 良い溶け込み
黒川岳さんの作品 に頭を突っ込む女将
無事展示を終えて清々しく帰る途中に脱輪した時
男たちが勇ましく引き上げた
たくさんのおもひで
語りきれず しかし刻まれて